数日前かなり寒くなっていた日、気がつくとボタン雪が吹雪いていました。
えっ?もうすぐ3月なんだけど・・・と思いましたが、ここから本格的な春へと切り替わっていくんだなと思いました。
翌日は、昨日の寒さが嘘のような陽気になりました。
後戻りしながらゆっくりと進んでいく、この春の移ろいが私は好きです。
古い歌ですが、♪365歩のマーチで「3歩進んで2歩下がる」って歌詞があるのですが、これを思い出します。
行きつ戻りつしながらもゆっくり進んでいくのもいいなと思えます。

今週は一気にほころびそうですね。
子どもの時から着物好きだった母が使っていた帯締めをよく見ていました。
こんな紐なんだけど不思議によく締まるし美しいなと思っていた組紐。
そう思ったものの、当時はそこまで興味はありませんでした。
10数年前伊勢志摩に旅行した際に『伊賀組紐』の携帯ストラップになっている商品に出会った時、とても驚きました。
あの伝統工芸である帯締めの紐が、こんな風に現代に活かされるという発想と可愛い色遣いにとても魅かれました。
それが、とても丈夫だったのです。汚れることはあっても、切れたりほころびることもなく日々の扱いの中でその姿を保っていました。
本来紐には、
「物と物を結ぶ」
「人と人を結ぶ」
「縁を結ぶ」など
「結ぶ」という「用」の役割があります。
これに組紐は、装飾美という美しさを備えます。
今では和装で使われることがほとんどですが、古くは武具や馬具にも使われ実用的な面と武士の粋なお洒落として使われていたと聞きます。神社の御簾や幕を上げるのに組紐を結んだものが使われているのを見たこともあります。
その結び方にもいろいろな結び方があって、それぞれ意味があることもつい最近になって知り、実用的な面と装飾的な面と祈りや願いまでをその役割に持つことを知って、更に興味を持っていました。
数年前ある方と知り合いました。
当時彼女は、組紐デザイナーとして活動を始めたばかりでした。
不思議なご縁ですが、その方が教室を立ち上げることになり、やってみたいと思っていた私の願いと繋がりました。
体験会には、何度もお邪魔させていただいていたのですが、本格的に始めることになりました。
いままでは糸の準備や組み台の準備まで全てお任せだったんですが、今回は全部自分の手で準備し、出来上がると約1.5メートルになる紐を組み上げていくのが目標です。
何事にも通じることですが、この準備が一番大変です。
組み始めるまでの糸のよりを一束ずつほどいて糸玉にかけていく作業が、なかなかに大変です。
長さが2.7メートルある糸束を8つの玉に巻いて、それを台にかけて使っていくのですが、ここまでをおろそかにするときれいに組むことはできません。
ピアノでもそうですよね。
早くぱっぱと弾きたいところなんですが、入念な譜読で音の確認・リズムの確認・流れの確認をしながらでないと上手く弾けないのとおんなじだなぁと思いました。
初めて自分でするので、一つ一つの動作ややり方を教えてもらい確認しながら進めます。
やっと組む所まで準備ができるのに、ほとんどの時間を費やしてしまいました💦
組み方は、左右の規則的な動きです。
映画『君の名は』を観られたことありますか?その中にも組紐をする主人公が出てきます。
映画の中でも”結ぶ”=ムスビとしてテーマになっていました。

今回は、糸玉が倍の8玉で組み上げています。

中央の穴から下へ下へと紐が出来ていきます。
黒い袋は重りで、紐に引っ掛けて組目が歪まないように、
バランスを取っています。
ムスビ(産霊) → ムス=産む + ビ(ヒ)=霊力、力
ムスビとは、天地万物を生み出す霊妙な力を備えた神のことを言います。
映画『君の名は』の中でも、主人公のおばあさんが
「ムスビは、土地の氏神様。
ムスビは、糸と糸を 人と人を繋げる。
時が流れるのもムスビ。
糸は寄り集まって形を作り、時には絡まって、途切れ、また繋がっていく。
それがムスビであり、それが時間。」
と組紐を組んでいる主人公に語り掛けているシーンがありました。
現代の社会では、時間の進むスピードが速くて何でもパッとできて簡単に手に入ることが当たり前になってきました。
でも現実、生きている中ではパッと簡単に答えが見つからないことや結果がでないことは沢山あって、手探りでゆっくり見つけていくしかありません。
その見つける過程さえも楽しみながら、その瞬間を心地よく過ごすことが出来るといいなぁと思います。
糸玉を一つ一つ組んでできる一目は小さいのですが、ゆっくり進むうちにいつの間にか1本の紐が出来上がっていく過程は、人生にも置き換えられるなぁと思いました。
組み始めると、無心になっている自分に気づきました。
シルクやシルクタッチの糸を使うので、とても手触りが心地よいのです。
規則的に手に心地よい糸の感触を感じながら糸玉を動かし、その度ごとに乱れた糸を整えていく。
日頃のごちゃごちゃした思考は、そこにはありません。
実際に目の前に美しい組目が出来上がっていくのを見ると、
自分がやったことに満足感が持てたり、頑張った自分を褒める言葉も出てきます。
体験では十分に感じることのできなかった心落ち着く、整う瞬間を体験したと思います。
”組紐にチャレンジする!”ことは、
私の「やりたいことリスト」の一つでした。
やりたいことは、叶えていくと私たちに今までとは違った世界を目の前に映してくれます。
そこに学びであったり、気づきであったりが加わり、私たちを成長へと導いてくれると思うのです。
心が豊かになっていく、自分の器が広がるそんなキッカケになるのだと思います。
やりたいな!と思ったことは、やらない理由を見つけて諦めるのではなく、
まずはやってみてから考える🍀
「あなたのやりたいことは、何ですか?」
