柳川へは、これまで何度か足を運んでいます。
けれど今回、コンサートで「白秋コーナー」をすると決めたことで、
直前になって、もう一度白秋先生に会いたくなり、
柳川へ出かけてきました。

柳川には掘割が沢山あって、川下りをしながら船からの景色を楽しめます。
この日も暑い日だったので、みなさん「ばっちょ笠(番匠笠)」をかぶっています。
あまりの暑さに、コミュニティーバスを利用しました。
このバスが近づいてくると、
白秋の童謡が聴こえてくるんです。
バスに乗っても大きな音量ではありませんが、心地よく歌が流れていて、
とってもほっこりしました。
沖端というバス停で下車すると、歩いて2分の所に白秋の生家はあります。

瓦と漆喰で塗られた”なまこ壁”が特徴の大きなお屋敷で、
藩御用達の海鮮問屋から祖父の時代に酒問屋へと商売替えをされたそうです。


土間は、広く長く続きそれに沿って、沢山お部屋が並んでいました。
中庭には、隠居部屋と言われる白秋先生の離れの勉強部屋がありました。
大切に育てられ、跡取りとして大きな期待を寄せられていたことが伝わってきます。
将来の自分の行く末を思いながら、
実現したい夢との狭間で、
大きな苦悩や葛藤を抱えていたのではないか。
そんなことに思いを巡らせました。

庭には、ザボンとも呼ばれる大きな文旦が、たわわに実っていました。
文旦の実は大きくて直径10㌢以上あります。

生家は、白秋先生が18歳の時火事にあい、
それが元になって商売が傾き、売られてしまいます。
柳川の人たちの手で再興されて、今は展示館になっています。
蔵には白秋先生が手掛けた沢山の校歌や社歌が、
現存する直筆の歌詞と譜面も一緒に展示されていて、
つい楽譜を見ながらメロディーを口ずさんでしまいました。
作曲家山田耕筰との共作も数多く残されているようです。
今は、私もですがPCで楽譜を入力します。
几帳面にきれいに書かれた手書きの楽譜がなんだか懐かしく感動しました。
情景を描き出す言葉に秀でた北原白秋という詩人と、
美しいメロディーを紡ぎ出す山田耕筰という作曲家。
無数の楽譜と歌詞の展示を見ていると、
そんな二人が出会い、
時にはぶつかりながらも、お互いに刺激を受け、
たくさんの作品に命を吹き込んでいったのだと思うと、
なんとも不思議なご縁を感じました。
きっと二人は、お互いの才能をさらに引き出し、
高め合う存在になっていったのでしょうね。
この焼け残った土蔵の空間を、なんと私一人で独占していました(笑)。
扇風機のぬるい風に当たりながら、
白秋先生と耕筰先生に思いを馳せる楽しい時間を過ごしました。

生家を出て、中庭を抜けると記念館があります。
白秋先生や柳川のことについて分かりやすく紹介された展示と共に
映像でも紹介されています。
暑い外とは対照的に、ゆっくり見て過ごせます。

資料館の2階の展示室に入ってすぐに展示されている晩年の詩。
20年ぶりに故郷に帰ってきた時に読んだ詩の
「帰去来」という題は、
陶淵明の「帰去来辞」に由来するもので、
「さあ、帰ろう」という意味だそうです。
遠く離れてしまった故郷への想いを、
心の底に持ち続けていたのではないかと思います。
感受性豊かな少年時代を過ごした柳川。
そこに帰ることができ、思いがけない驚きと感動に涙した故郷。
けれど、詩の中には、故郷への懐かしさだけではなく、
「もうこの目で故郷の景色を見ることができなくなるかもしれない」
という切実な思いも感じられます。
そして故郷も、そこで過ごした人たちも、もう昔のままではない。
それでも、心の中にはいつまでも
その頃の柳川の景色と子どもの頃の自分がいる。
そんな白秋の思いが、この詩から伝わってきて、
一人の人間としての故郷への想いに、
胸がジーンと熱くなりました。
シアタールームで映像を鑑賞していると、
白秋先生を描いた映画「この道」についても紹介されていました。
恥ずかしながら、この映画の存在を私は知りませんでした。
この映画で北原白秋役に大森南朋さん、
山田耕筰役をEXILEのAKIRAさんが務められています。
主題歌の「この道」をうたっているのは、EXILEのATSUSHIさんです。
今回のコンサートでは、EXILEの「道」を弾く予定です。
白秋先生を訪ねた最後に、
思いがけず今度のコンサートへつながる
『道』まで見つけてしまい、
不思議なご縁を感じました。
音楽を聴いたり、弾いたりしていると、そこに「景色」が浮かんでくることがあります。 以前、そんなことを感じながら綴った記事があります。 よろしければ、こちらもどうぞ。
今回、柳川で白秋先生に会い、ますます楽しみになった「白秋コーナー」。 9月のコンサートで、皆さんと一緒に白秋が紡いだ童謡の世界を味わえたらと思っています。
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